【藤井聡】デフレからの「脱出速度」は、「一ヶ月で1兆円強」の需要拡大

FROM 藤井聡@京都大学大学院教授、内閣官房参与

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今月はじめ、「大型景気対策13.5兆円」(財政投融資6兆円、政府支出7.5兆円)が閣議決定されました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL02HQM_S6A800C1000000/

そして、先週は、その枠組みに基づいた具体的予算執行の第一弾として、「秋の補正予算3.3兆円」が決定されました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160824/k10010652911000.html

おりしも、最新の統計によれば、現在の日本経済は芳しくない状況に置かれていることは明白です。

4-6月期の実質成長率は「プラス0.0%」と、一応若干のプラス、とはなったものの、実質的にはほぼゼロ成長の状況にあることが明らかになりました。
http://jp.reuters.com/article/japan-gdp-june-idJPKCN10Q007?rpc=188

しかも、かろうじて「プラス」成長となった背景には、公共投資額(公的固定資本形成)の伸びがあったことも合わせて報道されています。

公共投資は、この4-6月期にプラス2.3%。

逆に言うなら、このプラス2.3%が無ければ、「マイナス成長」であったわけです。

ではなぜ、公共投資が増えたのかといえば、これは今年度、政府が、

 「公共投資の前倒し執行」

を盛んに行ったからでした。

これは、今年4月から来年3月までの今年度で執行予定の公共事業を、可能な限り早く行い、今年前半の景気対策としよう、とするもの。

具体的には、今年度は、「公共事業を中心とする12.1兆円を対象に、今年9月末までに8割程度が契約済み」となるように、予算が執行されることが目指されました。
http://jp.reuters.com/article/budget-idJPKCN0X10UU

予算をまんべんなく執行し、9月末までの半年間で「5割」執行すると想定するなら、今年の前半には、予算の「3割」分、公共事業が「拡大」されたことになります。

この「前倒し執行による、今年度前記における公共投資の拡大」の結果、4-6月期の公共投資はプラス2.3%となり、これを通して経済全体が「マイナス成長」となることを食い止めたのです。

・・・・しかし、「前倒し執行」したからといって、それだけで予算総額が増えるわけではありません。今年度の後半、つまり、10月~3月までの半年の間には、今年度の当初予算の「2割」しか残ってはいません。これはもちろん、当初予定されていた予算額から「3割分」も少ない水準です。その額はおおよそ1.8兆円。

つまり「前倒し執行」のおかげで、今年度の後半は「マイナス1.8兆円の公共投資の削減」が見込まれる状況にあるのですが……そんな中で、今月決定された「秋の補正予算」で公共投資(インフラ整備)が追加支出されることになったのです。

その金額は、1.4兆円。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160824/k10010652911000.html

この金額は、オーダーとしては、先に示した「今年度後半に、削減された1.8兆円」と大きくかい離するものではないのかもしれませんが、それでも、4000億円も低いものです。

こう考えると、公共投資について言うなら今回の補正予算は、前倒し執行のために減らされた「穴」をある程度埋め合わせるものだが、それでも、その穴を「8割がた」しか埋めることができないものだ———ということになります。

つまり、今年度の補正予算と当初予算を全て加味すれば、増えるのは、4月~9月の半年間だけで、10月以降は増加するどころかむしろ微減する――という状況にあるのです。

さらにいうなら、公共投資の拡大によるGDPの拡大効果、というものは、今回発表された4-6月期と、次に発表される7-9月期の二回だけで、10月以降には、見いだすことができないだろう、と予期されるのです!

――繰り返しますが、今回のGDP統計では、公共投資の拡大がなければ、「マイナス成長」となっていたわけです。それほどに今、日本国民の消費、投資は縮退しているのです。

そして、その頼みの綱の公共投資の拡大も、現状の政府予算の支出予定では、今年後半からは期待できない――ということが明らかになっている状況なのです。

これでは、「一年間あたり15兆円」の規模で存在している「デフレギャップ」が埋まらず、わが国が「デフレからの脱出速度」を確保することは不可能となるでしょう。

実際、「前倒し執行」によって、公共投資が拡大したはずの今年の4-6月期でも、(過小評価されることが知られている内閣府の試算でも)デフレギャップが拡大してしまっているのです。
http://jp.reuters.com/article/q1gdp-gap-idJPKCN1140BF

つまりこのままでは、政府支出はデフレ脱却にとっては「too little, too slow」だという次第です。

この現状を打破するには、デフレギャップが完全に埋まるまでの間、十分な政府支出の「速度」を確保し続ける他ありません。ここに言う速度とは、

  「一月当たり(一年あたり)の政府支出額」

という、文字通りの「支出速度」です(同じ10兆円でも、それを一月で執行すれば、まさに「一か月あたり10兆円=年間で120兆円」もの速度が確保されますが、それを10か月で執行すれば「一か月あたり1兆円=年間で12兆円」の速度しか確保されないのです)。

デフレ脱出のための財政支出には「規模」だけでなく、「速度」の視点からの評価も必要不可欠なのです。

そして、今、我が国における財出の速度確保のために具体的に求められているのは、次の一点です。

「補正予算を対象とした、さらなる政府支出の前倒し執行」

つまり、今回決定された「秋の補正予算3.3兆円」を対象に、これを年内、あるいは、遅くとも年度末までに「全て使い切る」事を目指した予算執行を図るわけです。

そしてもちろん、そうすれば、今年度の期末期あたりに、「予算不足」が生ずることになるでしょう。したがって、そのために、

「第三次の年度末の補正予算の決定」

を、今から検討しておくことも重要となるでしょう。

こうすれば、今年度一年間における政府支出が、後半期、期末期にかけて「縮退」し、経済が失速することを避けることができるでしょう。

そしていうまでもなく、政府支出「速度」を確保するためには、次年度の予算をさらに拡充していくこともまた必要不可欠です。

つまり、デフレ脱却のために我が国にいま求められているのは、

第一に、秋の補正予算の早期執行、
第二に、「本格的」な「年度末・補正予算」の決定、
第三に、次年度当初予算の拡充、

という三つを通して、「一か月あたりの財政支出額=支出速度」を十分に高めていくことなのです。

その目安は、現在不足しているネットの資金需要(=実際のデフレギャップサイズ)である、
http://jp.reuters.com/article/fujii-abe-advise-interview-idJPKCN10Y179

  一年間で15兆円

つまり、一か月あたりの表記に直せば、

  一か月あたり一兆円強(1.25兆円)

の支出の拡大なのです(四半期=3か月なら4超円弱(3.75兆円)、半年なら7.5兆円)。

デフレ脱却のための財政支出の拡大に乗り出した我が国政府が、十分な

  「速度」

を確保できるだけの支出拡大に成功することを、心より祈念申し上げます。

P.S. デフレ脱却のための、支出「速度」を、じっくり考えてみたい方は、是非、コチラを。
https://goo.gl/QNEQkd

P.S.2 日本で理性的な政策が採用されない原因にご関心の方は、是非、コチラを。
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/327981
ーーー発行者よりーーー

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