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2014年4月5日

【土方翔】守るべきもの

FROM 土方翔(ひじかた かける)@作家&経世論研究所研究員

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昨年末に続き、今回で二回目の本メルマガ投稿となります。土方翔と申します。

【前回の投稿コラム】
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/12/29/mesinfo-2/

前回は三橋経済塾塾生としての投稿でしたが、この度、言問吾妻(こととい あづま)さんと共に株式会社経世論研究所の所属作家&研究員となることが決まりました。とはいえ実績はなく、まだまだ半人前であることには変わりありません。至らない点も多々あるかとは存じますが、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

というわけで、本日のコラム。テーマは「守るべきもの」。

まずは仕事のお話から。
今年2月末、仕事の関係でサウジアラビアへ行ってきたのですが、この時期はベスト・シーズンということで、デザート・キャンプに招待されました。

デザート・キャンプとはその名の通り「砂漠でのキャンプ」でして、車で30分程先にある会社所有のキャンプ場で食事を楽しむというものです。もちろん周りは見渡す限り砂漠x3。砂漠はサラサラというよりは、岩が交じったゴツゴツとした土漠(どばく)と呼ばれるものです。

移動途中ではキャメル・マーケット(ラクダ市場)なるところへも立ち寄りました。近くで見るラクダちゃんたちは綺麗な瞳に長いまつ毛、愛くるしい口元と確かに可愛いのですが、マーケットで売り買いされていることを考えると、日本でいう犬や猫のような愛玩対象ではないのでしょう。動物愛護団体の方へは決してオススメできない場所です。

キャンプ場に到着後は、以下3ステップの順に進行しました。
1. _ _ _焚き火を囲む形で、砂漠に敷いた絨毯に全員であぐらをかき、アラブ流のお茶会がスタート。
アラビック・コーヒーとデーツ(ナツメヤシの実)はいわば定番の組み合わせです。
2. _ _ _日没後、砂漠の真ん中で横になって天体観測。2月はサウジでも気温が朝晩10℃以下になるのですが、その寒さが気にならない程、星が近くてキレイでした。
3. _ _ _最後は、大皿に盛られた「カプサ(Kabsa)」を囲んでの食事。カプサとはサウジの伝統料理で、米と肉(サウジは豚肉がだめなので、大抵は羊か鳥肉)の炊き込みご飯のようなものです。

簡単ではありますが、以上が今回出張の合間に体験したデザート・キャンプの流れです。異国のサウジ文化に直接触れる中、先達が連綿と積み重ねてきたもの= 文化・伝統に対して畏敬の念を頂くからでしょうか、自国の文化を見つめ直す大変良い機会となりました。

私は、そうした固有の文化が残る世界で互いの価値観を尊重しながら生きることが、豊かな人生を送る上で大切な要素だと思いますし、私が守りたいものは、恐らくその辺りにあるのではと考えております。

本日は、その「積み重ねてきたもの=文化・伝統」を毀損させる可能性があるという点で、デフレの恐さについて改めて考えてみたいと思います。(前置き長くてスイマセン…。)

現在、デフレの原因を需給ギャップに求めるかどうかで、政策面における様々な議論が展開されていることは皆さんご承知の通りです。一方で、その根源にある思想が隠されてしまうと、某経済御用学者のトンデモ理論もある程度は筋が通っている(ように聞こえてしまう)為、それがデフレ理解を妨げている一つの要因ともいえそうです。

そこで!
青木泰樹先生がデフレ原因の解釈を以下4つに分類されておりますので、是非とも参考にしてみて下さい。
【需給ギャップとデフレ】 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11573899021.html

1. _ _ _デフレの原因は「総需要不足である」とするケインズ経済学
2. _ _ _デフレの原因は「純粋に貨幣的要因である」とする新古典派経済学
3. _ _ _デフレの原因は「マネー不足である」とするリフレ派
4. _ _ _デフレの原因は「日本経済固有の構造問題である」とする立場

と、デフレ脱却は誰にとっても共通の目的である(と思いたい)ものの、その政策においてはそれぞれの立場で解釈が異なっているのが現状です。それは例えば、経済学がビジネスとして利用されていることや産業化してしまっていること、ケインズに死んでもらわないと困ってしまう人(?)がいることが理由として挙げられるかと思いますが、少なくともデフレ脱却に「万能薬はない」ということだけは確かなようです。

中野先生は著書「日本防衛論」の中で、日本経済が現在直面している大きなリスクとして、「ユーロ危機」「アメリカの景気後退」「新興国の構造不況」「地政学的変動」「気候変動」「地殻変動」を挙げられています。15年前と違い、覇権国家が消滅したGゼロの世界では、自国のデフレ脱却に向けたより高度な舵取りが要求されているといえます。
【参考書籍】日本防衛論 http://www.amazon.co.jp//dp/4047315923

この中で、特に私が注目しているのが、「ユーロ危機」です。それは、この「ユーロ危機」をきっかけに人類の文化水準が著しく衰退するのでは危惧しているからです。

どういうことか。

「ユーロ危機」が発生するということは、リーマンショック以上の世界同時不況、すなわち「世界同時デフレ」の可能性をも孕んでいるものです。そして一旦デフレ環境に陥ると、負債の返済と支出の削減をしようとする心理が人々に働き、非効率部門を淘汰して効率性を高め、生産性(=労働者一人あたりの付加価値)を向上させようという動きが高まります。

資本主義の世界で生きている私達にとって、「生産性を高める」というのは何とも耳触りが良い。個人やビジネスで考える分には、美徳すら感じます。しかしながら、所得(GDP)が増えない一定のパイで、もし個人が合理的に行動すればするほど・・・、とこれはもうご存知の方も多いと思うので割愛します。(詳しくは、三橋経済塾経済研究部部長のコラムをご参照ください。国民経済を学ぶ大切さがここにあります。)
【荒波レイ】 “脱・新自由主義”_http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/02/16/mesinfo-3/

「非効率部門を淘汰する」ということは、個人レベルでいえば何かを「捨てる」ということです。「捨てる」という行為にはある種の快感が伴います。部屋の整理をする過程で、とても清々しい気持ちになった経験をお持ちの方も多いはず。

でも、考えてほしいのです。

「捨てる」ということは、別の面で見ると「何を残すか」ということです。そして何を残すべきかを考えることは、「何が大切か」を考えることです。「何が大切か」が分かっているからこそ、「守ること」ができますし、同時にそのために「戦うこと」ができるのではないでしょうか。

(15年間も!)デフレのトップランナーとして効率性を追求し走り続ける中で、日本国民は「何が大切か」「何を残すべきか」を考えることなく、ただ捨てることに邁進してきただけではないか。それによって価値観が歪められた結果、日本中で自己喪失、自己不在が起きているのではないか。すなわち、デフレの恐ろしさとは「人間の価値観を破壊させること」にこそあると思えるのです。(「捨てること」事態を否定しているわけではなく、飽くまでもその「動機」に問題があるということです。)

もしそうであるなら、「ユーロ危機⇒世界同時デフレ」が長い伝統、文化、歴史に対する価値観を崩壊させるきっかけとなり得るのでは、と前述の懸念に至ったわけです。文化は価値観が共有される土壌があってこそ形成されるものだと思いますし、そのためには国民を豊かにする「経世済民」の達成が不可欠です。

「アリとキリギリス」でいえば、キリギリスのバイオリンの価値を認める余裕がアリにある、そんな世の中でしょうか。冬にキリギリスが凍えて死んで、アリも働き過ぎて死ぬような世の中は、私はまっぴら御免です。

というわけで、文化面からデフレの恐ろしさを考えてみました。
(なお、価値観=イデオロギーではありません。ここ、大事なとこです!!)

理屈でもなく、ましておカネでも計算できない価値観(≒生き方)の追求においては、デフレ脱却を妨げる「合成の誤謬」は起きないはずです。であれば、いっそのこと個人レベルで「合理的経済人」ならぬ「情緒的文化人」を目指してみてはどうでしょうか。

経済の難しい話はさておき、新年度が始まりましたし、気分転換にまずは部屋の掃除をしてみるのも良いかもしれませんね。「何を捨て」「何を残すか」と向き合う過程の中で、「大切なもの」「守るべきもの」に気づければ、それが案外デフレ脱却の道に繋がっているのかもしません。

PS
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https://www.youtube.com/user/mitsuhashipress

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【土方翔】守るべきものへの3件のコメント

  1. ofu_1 より

    日銀に日本国債1000兆円を買い取らせよう。 三橋貴明(敬称略)の主張通り、政府の国債発行残高はゼロになります。安愚楽牧場に7000億円も集まるほどの民間の資金余剰です。余資が私、金融機関、日本銀行へと持ち手が代わるだけといえます。金利の支払う者と受け取る者が同一人物になり、しかも無限に印刷できます。 余剰資金を超える国債はどこまで発行できるのか? 世界中の猛禽ファンド(資金を預かり成果を上げられなければ失業が待っている人々の集団)が計算してくれます。 今日中に国債全額を買い取ると、金融機関に1000兆円の現金が入ります。融資できる上限が1000兆_約10倍=1京円_500兆円(日本のGDP)=20。運用する先などありません。 アベノミクス以前に日銀当座に80兆円が寝ていましたので、民間での融資可能額は800兆円ありました。GDPの1.6倍です。それを200兆円_10倍=2000兆円にすることになりました。 国債乱発(1000兆円)を繰り返す政府ですので、あっと言う間に余剰資金を食い尽くすでしょう。 金融機関(金貸し業、事実上資金の十倍まで貨幣を発行できる)の歴史は150年位で、ローマ時代の金貸しは手持ち資金が融資額限度です。 運用先のない資金余剰を抱えた国家には、金貸し業は不要かも(貸す相手が見当たりません)?という推測が出てきます。 猪瀬直樹(敬称略)や渡辺喜美はなぜ金融機関から借り入れしなかったのでしょうか?。既成勢力に対抗するものや新参者は金融機関にはじかれるとも見えます。みんなの党の政党交付金は17.8億円(2013年)です。 資金の10倍まで貨幣を発行(事実上)できる特権は離せません。政治業者も鎖でつながれて(まるでSM)いる筈です。 たとえば1億円/年程度までの金売買差益税を3%の源泉分離にしておけば金保有大国になっていました。 個人のお金の使い道にある壁(安愚楽のようなファンドの制度設計と資金の保全、税制)を改善することなく、金融機関の特権に群がった人々がデフレの元凶に見えます。 金融機関のない国家が併存しているのですから、大外れでもなさそうです。 一人一票の公平と投票手当(1000円/1回税込を是非とも頂きたい)を公約する政党に投票しましょう。ウソついたら民主党のように消滅同等に扱いましょう。 たったこれだけで投票率は95%近くへ上昇し宗教政党や特定組合政党の過大権力が排除されます。とはならないね? お金の鎖に絡めとられたのが政治業者とも云えます(例えば猪瀬直樹)。 あきらめて全力で自分の収入を確保しましょう。   

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  2. ワンダーほーげる より

    リフレ・エコノミストが出ている動画です。内容は無価値なのでスルーして下さい。コメント欄に注目して下さい。リフレの欺瞞に気づき始めてきたことが伺えますよ。

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  3. Tansar より

    勝れた洞察だと思います。安倍総理は守るべきものは守るとちゃんと言っておられるようだから安心出来ますね? 彼の頭の中にあるのは松蔭先生です。(故小室直樹がずっこけたのも実はそれ。彼は母方で會津に縁がある人だそうだが、おそらく藩士の子孫ではなかったのだろう。長州の狂気の源泉はまさしくおの吉田クンです。)安倍総理が瑞穂の国の農業とか規範意識を持った国民というのは吉田クンを最高の模範としたもの。それで外のことは周囲の鼠たち(産業競争力会議の面々)におまかせ。しかしその吉田クンはカルトの被害者となって幕閣暗殺未遂(テロリスト)の容疑で処刑された人です。もちろん拷問の一切無かった自白の上でです(アベ総理の愛読書である『留魂録』をみられたし)。松下村塾とは一面ではテロリスト養成塾でもあったのです。吉田クンの本業は伊藤仁斎のような人倫の探求ではなくして軍学。アメリカ合衆国に誰かが吹聴すべきです。アメ公は自作自演の911以降Terrroristという言葉に過剰反応するので。面白い事になるでしょう。    松蔭先生こそが国家神道の核である。産業競争力会議に集う面々の中でも下駄屋之平蔵(gETAya NO HEIZOU)君といったら「私は新自由主義者ではない」と日頃から口にしているように目指すところは新自由主義者ではないのです。なぜならこのコラムで述べられている文化の破壊そのものだから。新自由主義は共闘しているものにすぎない。部落解放運動の革命家である彼(部落解放同盟には入っていない)にとっては鼠と同じような健常者による平等な競争社会こそが目指す境地です。これは三橋先生も指摘しておられるように東洋経済のWEB版に昨年載ったヘイゾウ君のインタビューを参照されたし。家に勝手に侵入してきた鼠たちと暮らしていると平蔵君たちの考え方が判るようになってくるのがおもしろい。

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