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2014年8月5日

【藤井聡】学校教育での「防災まちづくり・くにづくり学習」に、ご協力を!

From 藤井聡@京都大学大学院教授

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●「月刊三橋」最新号のテーマは、「イラク危機」。
三橋貴明の無料お試し音声を公開中

https://www.youtube.com/watch?v=KHNs1OBKsVc

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都会に住んでいるとついつい忘れがちですが、私たちは、「自然」の中に生きています。

この自然では、雨も降れば、風も吹き、すべてのモノは朽ち、すべての生き物は常に「死んでしまう危機」に、刹那刹那に直面しながら生きています。

私達もまた、それと何も変わりません。天井が落ちてきたり、水に流されたりすれば、瞬くまでに誰もがその命を失ってしまいます。

でも、普段の私たちの社会の中では「死ぬ」ことは、大そう、珍しいことです。

一旦友達や知り合いになった人々は、今日から一年後になってもまだ、そのほとんどが死んではいません。ましてや、小中学生になれば、クラスの友達が死ぬということは、めったにあることではありません。

だから、私たちは、「死んでしまう危機」というものが、そもそも存在していることを、あらかた忘れ去ってしまっています。

だから私たちは、ついつい、「大自然の中に生きている、一つの生き物なのだ」という、当たり前の事を忘れてしまいます。

(そしてそのせいで、人々は「非本来的」な「大衆人」となり、文明の「野蛮化」が今日過激に推進してしまっているのですが....そのあたりは、例えばこちらを↓)
http://amzn.to/1i93IiW

。。。。

ではなぜ、私達の周りから「死んでしまう危機」が、あらかた消え去ってしまったかのように「見える」のでしょうか。

それはすなわち、私たちが一生懸命、何百年、何千年という時間を使って、この危険だらけの大自然の中に「わたしたちの住み処」作り上げてきたから、です。

この大自然の中に、「わたしたちの住み処」を作り上げる───そんな営為を、私達日本人は、「築土構木」、つまり「土木」と呼びました。

つまり、わたしたちはこの「築土構木」「土木」の営為によって、死の影をあらかた目の前から追い払うことに成功したのです。

ですが、だからといって、「大自然の中に生きている、一つの生き物なのだ」という事を忘れるのは、決して「必然」ではありません。

私たちの「住み処」の外側には荒涼たる大自然が広がっており、かつ、その「住み処」は、わたしたちの意志の力で作り上げ、不断の努力でもって維持しつづけているものなのだ───という事を、当たり前のように「理解」しているのなら、私たちは「大自然の中に生きている」ことも、「一つの生き物である」という事も、忘れることはないでしょう。

それはちょうど、深い海の底で超絶な水圧に耐える潜水艦の乗組員は、仮にその中の暮らしがどれだけ快適でも、誰も皆、自分自身が死と隣合わせであることを片時も忘れないことと同じです。

かくして私達が、「大自然の中に生きている、一つの生き物なのだ」という当たり前の認識を失ったのは(そして「それ故」に、現代人がここまで野蛮化し、災害に脆弱になってしまったのは)、「築土構木」「土木」の営為によって安全になったから、というよりもむしろ、多くの人々が、「築土構木」「土木」の営為が延々と続けられているのだ、ということを「忘れて」しまったからなのです。

──そんなことを、中野剛志さんや三橋貴明さん、柴山佳太さん、大石久和さん、青木俊樹さんたちと語り合ったのが、『築土構木の思想』です。
http://www.shobunsha.co.jp/?p=3225

ただし、こんな「大自然の中に生きている、一つの生き物なのだ」という当たり前のこと、そして、それを思い起こすために必須である「土木の視点」を知っておくべきなのは、『築土構木の思想』をお読みいただける様な、あるいは、本メルマガ読者の様な「大人」だけではありません。

「子供たち」もまた、そうした視点を、当たり前のように持っておくことは、真っ当な大人になる上で極めて重要であることは論をまちません

では、今、それが、学校教育で十分に教えられてきているのかと言えば….残念ながら、そうではありません。

かくして、筆者は、

『子供達に今一番足りないのは、「土木の視点」なのではないか?

と、深く認識している次第です。

(詳しくは下記をご参照ください
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/cvilandeducation/concept.html
あるいはさらにご関心の方は、下記論文をご参照ください。
http://www.jsce.or.jp/library/open/proc/maglist2/02504/2010/02-0039.pdf )

そんな思いから、教育学会の先生方と共同で、毎年、

『土木と学校教育フォーラム』

なる小さな会合を、過去数年間、毎年行ってまいりました。

そして、第6回にあたる今年のテーマは、

『防災まちづくり・くにづくり学習』
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/cvilandeducation/index.html

例えば過日、防災教育で著名な片田先生と….
(→ 前回の対談の様子はこちら http://www.youtube.com/watch?v=bhzkqdpZfVU
ある新聞社の企画で対談したのですが、その中でも、『防災まちづくり・くにづくり学習』の必要性を改めて深く認識いたしました。

今、さかんに「防災教育」が行われているのですが、「避難」を教える事で精一杯で、あらゆる災害に満ち満ちているこの大自然の中で「まちづくり」「くにづくり」をどのように進めればいいのか──という視点が、子供たちに十分に教えられていない、ということ、そして、それが、今日の防災教育(ひいては、今日の学校教育と、日本社会そのものの)の、

『巨大な課題』

となっているという事、を互いに確認しあった次第です。

そんな思いから、今年は、夏休み最後の日曜日であります8月31日に、東京の四谷
http://www.jsce.or.jp/contact/map.shtml
にて、『防災まちづくり・くにづくり学習』のフォーラムを開催いたします。

当日は、まずは当方から、

「「防災まちづくり・くにづくり学習」について
〜実社会での防災・強靭化の「いま」と、その学校教育〜」

のお話を差し上げた上で、仙台や女川、高知の小中学校の「防災や復興まちづくり」の事例報告や、教育学の先生方からの「防災まちづくり・くにづくり」についてのご講演をいただきます。

最後に、当方がとりまとめつつ、文科省の防災教育担当者、和歌山県で津波防災まちづくりを実践している学校の先生にご登壇いただくパネルディスカッションを行います。

(詳しくはこちら→
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/cvilandeducation/programforum6.html

強くたくましい国民をつくりあげ、強靭でしなやかな「まち」と「くに」を作り上げるためにも、当方としましては、一人でも多くの小中学校、高校の先生方にご参加いただきたいと考えております。

ついては、本メルマガ読者の中で、学校の先生方がおられましたら、是非、ご参加いただけますと幸いです!

先生以外の方でも、もし、「学校の先生の知り合いがいる」という方がおられましたら、是非、本情報、転送等、ご紹介差し上げていただけると助かります!!

(なお、プログラムの詳細、参加方法は、下記HPをご参照ください。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/cvilandeducation/index.html
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/cvilandeducation/programforum6.html
もちろん、当日参加も申し受ける予定ですし、また一般の方々でもご参加いただけます)。

また、当日の議論の成果は、何らかの形で書籍にしたり、政府・文科省を中心に、教育現場における防災教育に様々な形で反映して参りたいと考えています。

つきましては皆様、是非とも、ご協力の程、よろしくお願いいたします!

PS
当日は、「3・11くしの歯作戦体験」も、下記の深松さんから直接お話いただく予定です!

https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/542401339194147

PPS
中国暴発。三橋貴明の無料Videoを公開中
https://www.youtube.com/watch?v=ns-sXQ-Iey0

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  1. 櫪澤先生(そんな人は居ないけど) より

     まちづくり‥‥ 自分は、田舎から東京辺りの都会の会社に就職し、自分の喋る言葉にコンプレックスを感じ標準語に染まってしまった(戻れるとは思うのですが)気がします。考えてみると、そんな田舎コンプレックス根性が根となって、逆輸入ネオリベ経済人が自虐的英語崇拝に陥るのかもしれないのかもしれないともおもいました。 まちづくりから、なんか脱線してる感もなきにしもあらず、すみません。なんと言うべきか、まちづくりには、(標準語は明治から醸成されてきたのかもしれないけど)方言の復権もちょびっとはあったっちや、えぇっちゃなかろか、ち、おもたとですたいっ(私は骨と皮だけの貧弱な体格です)。ましてや英語崇拝は移民を助長してしまいそうで。 孤立した一愚民生活者が言えるこっちやねぇかもしれんとばってんか、支離滅裂な小言ば書いてしもたこつは許してやってつかぁさいっ。エリート狂想曲を奏でられる社会は洗練?され過ぎてしまうと格差を助長する気がするのです。 あ゛。蛇足ですが、外人さんの名前って、その言葉自体には意味はない(と思う)、日本人の名前には文字自体に意味がある。番号で呼ばれることに外人さんは違和感が無いのかもしれない。 でも逆輸入ネオリベ軍団には解らないことか。やっぱ俺ゃこれから建設されていく民間刑務所の第1号だ。ついに日本も最終局面に入った。さよならニッポンさよならアメリカ。さよならはっぴいえんど。そうだはっぴいえんどを帰って聴こうっと。

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  2. メイ より

     都会も、自然の中にある・・、人間も自然の生き物・・。噛みしめつつ読みました。 「土木」の営為により人間を守る環境が作られて、私たちが安全で安定した暮らしをさせて頂いている事に、「土木」に携わっておられる方々に、本当に感謝です。 「土木」は、人間が自然の中で生きていくうえで、欠かす事のできない営みである事、皆の為になる環境を作る事の意義を子供たちに伝える事は、とても大切だと感じました。 こういう事を教えてもらえた子供は幸運ですね。子供たちもきっと、「大切な事を教えてもらった」、と解るはずだと思います。

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  3. 拓三 より

    最近、自分の立ち位置ばかり気にして、詭弁、妄想、自己保守、的な話が増えて来た。日米開戦時、米兵が日本人捕虜から情報を聴きだすのは拷問しなくても簡単に口を割ると聴いたことがある。ただ一言、「アイツは知っていたのに、お前には知らされてないのか。」つまり、国よりも自己の優位性の方が勝っているのです。「アイツより俺の方がエライんだ。」「アイツより俺の方が知識があるんだ。」今の日本を見ていると、この話は「本当なんやな」と実感いたします。保守だの左翼だの、支那だの米国だの、自己の立ち位置なんか、どうでもええ話や。思考が狭まるだけやんけ。日本人の幸せを一番に考えれ。今回の藤井はんのメルマガを見て思ったことは、本気で日本の事を思っているんは、藤井聡だけどす。

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  4. ななし より

    タイムリーなお話ですね。否、本当は常にタイムリーな話題なのが「防災」なんでしょう。地震対策はもちろん、昨今は、洪水土砂崩れ対策も気になります。気象が異常だ異常だと騒いでいる暇があったら、山に土留を作ったり川に堤防を作ったりすればいいんですよね。異常だ嫌だって言ったって、豪雨が来る時は来るんですから。学校で防災を学べる機会と言えば、防災訓練と社会科くらいでしょうか。今なら「生活科」に組み込めそうですね。ソフトパワー「も」大事ですね。

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