欧州

2016年10月10日

【三橋貴明】世界の歴史はイギリスから動く

From 三橋貴明

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【今週のNewsピックアップ】

世界の歴史は(なぜか)イギリスから動く
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12206274311.html

英国を一つに
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12207561685.html

大変興味深いことに、世界の歴史はイギリスから動きます。
現代型の資本主義の始まりとなった産業革命は、イギリスがインド産綿製品(キャラコ)に対抗することを目的に、国内で生産性向上のための技術投資、設備投資を実施したことで口火を切りました。当時、イギリス国内の衣料品市場はキャラコに席巻されており、イギリスは綿製品について資本集約型の生産を実現するべく、莫大なお金を投じたのです。
最終的には、蒸気機関というGPT(汎用目的技術)の誕生につながり、蒸気機関車、蒸気船など、様々な製品が開発されていきました。

帝国主義の先駆けとなったのも、もちろんイギリスでです。産業革命で綿製品の生産性を高めたイギリスは、インドに対し「自由貿易」を要求。インドを英国産綿製品の市場、及び綿花の調達先として支配。インドの住民には主権を与えない、いわゆる「植民地型」の帝国主義が本格的に始まりました。そもそも帝国主義という言葉自体が、1878年に自由党系のイギリスの新聞が、保守党政権の対露強硬外交や国内の、排外的愛国主義の風潮を批判するために用いたことに端を発します。

「前回」のグローバリズムの象徴であった「金本位制」を開始したのも、イギリスです。1816年にイギリスで貨幣法が成立し、ソブリン金貨について自由鋳造、自由融解を認め、唯一の1ポンド法貨として、流通させることになりました。ちなみに、自由鋳造、自由融解とは、金(きん)の所有者が政府に対し、相当額の金貨との交換、もしくは貨幣への鋳造を要求できるという話で、勝手に個人が金貨を鋳造、融解するわけではありません。

さて、自ら率先して始めたにも関わらず、イギリスは大恐慌後に真っ先に金本位制を離脱しました。1931年に英マクドナルド内閣が、世界に先駆けて金本位制停止に踏み切ったのです。

第二次世界大戦後の「福祉国家」を始めたのも、イギリスです。第二次大戦終結直後に、イギリスで社会保障制度の拡充を示す「ベヴァリッジ報告」が提出されます。1945年に労働党のアトリー政権が成立したこともあり、イギリスは国民保険法、国民保健サービス法などを成立させ、体系的な社会保障制度を構築。医療費の無料化、雇用保険、救貧制度、公営住宅の建設などの「福祉国家を開始したのです。日本を含めた西側諸国は、イギリスに倣っていきます。

この「福祉国家」を最初にぶち壊したのも、イギリスです。1979年にサッチャー政権が成立。現代にまで続く、新自由主義的、グローバリズム的な構造改革が始まりました。現在のグローバリズムの祖は、アメリカではなくイギリスなのです。

そのイギリスが、今、EUという世界で最も進んだ「グローバリズム」の仕組みに背を向けようとしている。実に、興味深い話です。イギリスの新首相テリーザ・メイは、先日の保守党党大会の閉幕演説で、
「われわれには英国を一つにし、中道に根付き結束した新しい英国にするという大胆な計画がある」
と発言。「英国を一つに」をスローガンに、今後のイギリスは「イギリスが始めた」グローバリズム路線を修正していくことになります。

この種の「歴史的な動き」が始まったとき、最後まで既存の路線にこだわり、レジーム・チェンジが遅れる国が「歴史的に」我が国であるという現実を知ると、色々と示唆的だと思ってしまうのです。

ーーー発行者よりーーー

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【三橋貴明】世界の歴史はイギリスから動くへの2件のコメント

  1. 通りすがり より

    簡単に言うと、イギリスは世界経済や政治の動乱から自国を「保守」したのだろうと言うことが出来ると思います。イギリスはグローバルから背を向けたわけですが、そうすると次にやることは「自国の統合の強化」以外に無いでしょう。ではそのときに重要な、結束バンドのような要素は何になるか。これはちょっと考えたら明らかなのですが、自国の通貨と、自国の言語と、自国の王族でしょう。世界の最先端を行く(?)イギリスには、この3つがしっかり保守されています。これがイギリス人の知恵なのでしょうか。そして、この3つが保守されている国がもう1つあって、それは日本ですね。言うまでもなく、円と日本語と皇室です。以上より、これらを保守することが「イギリスにくっついていくこと」だと思うわけです。こんな事を言うと正に西洋かぶれっぽいのですが、まあ、そうするしか無いと思います。しかし、上の方の言う通りなら円が、政府の方針に従えば日本語が、共産党に従えば皇室が危ないです。ゆえに、TPPとか軍事とか農業とかエネルギーとか確かに重要なのですが、やはりそれらの問題の土台には、円と日本語と皇室を軽視するような思想(笑)があるということなのでしょう。

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  2. 拓三 より

    なぜ英国がEU離脱したのか。なぜ英国はEU加盟しながらポンドを守ったのか。コラ!財務省(米国)!よう見とけ!お前らの魂胆! 英国が潰してくれたわ!米国はともかく、財務省!お前ら自国通貨である『円』手放してドル中心の共通通貨作ろうとしてたやろ!お前らの政策全部その為の準備やんけ!金融政策はそのために利用して、財政は出来るだけ出さず緊縮で、民間主導で、そして国家の力を弱め、最後は共通通貨。共通通貨になったら今の財務省の理屈が全部、理にかなうわ。

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