アメリカ

2017年2月1日

【佐藤健志】日本は良くも悪くも戦前になど回帰しない

From 佐藤健志

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【オススメ】

月刊三橋最新号
「2017年の世界と日本『政治的タブーの罠』を見破れ!」
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以前より予告していた16冊目の本(アスペクトより2月刊行予定)について
タイトルが正式に決定しました。
_
この本には『2020年日本消滅』という仮題がついていましたが、
それを上回るインパクトがあります。
すなわち・・・
_
『右の売国、左の亡国〜2020年、日本は世界の中心で消滅する』
_
V(^-^)V\(^O^)/強烈だろう、おい\(^O^)/(^-^)V
_
「右の売国、左の亡国」はもともと、担当編集者・Kさんとの打ち合わせの席で浮かんだフレーズ。
_
現在の日本で、いわゆる戦後保守と
いわゆる左翼・リベラルがそれぞれやっていることを
端的に要約したらこうなるのではないか、
というわけです。

で、サブタイトル候補として残っていたのですが
こちらをメインにした方がいい!
という判断により、メインとサブが入れ替わることに。
_
2015年、やはりアスペクトから刊行した『愛国のパラドックス』には
「『右か左か』の時代は終わった」
というサブタイトルがついていましたが
期せずして、それを発展させる形になりました。

詳細はこちらをどうぞ。
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)

要するにわが国は2015年から2017年までの間に
「右か左か、の時代は終わった」
という段階から
「右であろうと左であろうと、このままでは国が消える」
段階に達した、ということですね。

そのような〈どっちに転んでもダメ〉状況を体現した事例をひとつ。

いわゆる左翼・リベラルのみなさんは、
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
なるものを想定し、それに反対することを非常に好みます。
_
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」に反対することこそ、
少なからぬ左翼・リベラルにとって
みずからのレーゾンデトール(存在理由)となっている、
そう評しても過言ではないでしょう。
_
「この道はいつか来た道」という詞など、
本当は北海道の情景を歌っただけなのに
いつの間にやら
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
を意味するものとして扱われるありさま。
_
詞を書いた北原白秋さん(1942年死去)が知ったら
どう思うことやらという感じですが、
それでも
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
にしなければ気がすまないらしい。
_
左翼・リベラルの間で安倍総理のイメージが悪いのも、総理が
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
を体現しているかのように見なされているからでしょう。
_
し・か・る・に。
安倍総理は本当に「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」を体現しているのか?
以下の記事をどうぞ。
_
「安倍総理も開いた口が塞がらない…稲田朋美防衛相の“KY参拝”」
_http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170117-00516630-shincho-pol

昨年12月29日、稲田朋美防衛大臣が靖国神社を参拝したとき、総理は感想を求められ
「ノーコメント」と答えました。

ところが、じつは周囲にたいして
「全然、分かってないな」と漏らしていたとか。
何が分かっていないのかというと・・・
_
要するに安倍総理、中国・韓国・アメリカなどからクレームがつきそうな靖国参拝は
自分がしないだけでなく、閣僚にもやってほしくないらしいのです。
_
ところが稲田防相、母方の伯父が特攻隊の訓練中に亡くなり、
靖国に祀られていることもあって、参拝したくて仕方ない。
_
そこで安倍総理、昨年の8月15日には稲田防相をジブチの陸上自衛隊視察に送り出しました。
参拝しなくても言い訳が立つように工夫したんですね。
けれどもこの点を、国会で民進党の辻元清美議員から突っつかれる。

「あなた(注:稲田防相)は
『自国のために命をささげた方に
感謝の心を表すことのできない国家であっては防衛は成り立ちません』
と言っている。言行不一致ではないか」
と批判されたのです。

さらに
「あなたの『戦争でなくなった方々へ心をささげる』というのは、
その程度だったのかと思われかねない」
とまで言われてしまう。
http://www.sankei.com/politics/news/160930/plt1609300035-n1.html

してみると辻元議員、
「総理や閣僚はむろん、天皇陛下も靖国参拝すべきだ」
と考えているのでもないかぎり、
「日本の防衛など成り立たなくて良い」
と考えているのでしょう。

どちらの解釈が妥当か、論じる必要はありませんね。
だから左は亡国だと言うのですが、それはとりあえず脇に置きます。

辻元議員の追及に涙ぐんだ稲田防相、年末年始には何としても参拝する気になったらしい。
困った安倍総理、今回は防相を自分の真珠湾訪問に同行させました。
記事が官邸関係者の話として伝えるところによれば・・・
_
「真珠湾訪問は、スピーチで“謝罪”や“反省”という言葉を使わなくとも、
そういう気持ちを込めて慰霊することが目的ですし、
先の戦争を乗り越えた日米の“和解”をアピールする場でもある。
一方、靖国参拝は、中国や韓国の反発が予想されるばかりか、
米国からもクレームがつく可能性がある。
稲田さんを連れて行けば、この時期の靖国参拝はできないと踏んだわけです」
_
してみると安倍総理、
やはりアメリカに頭を下げるべく真珠湾に行ったのでしょう。

対米従属脱却も何もあったものではない。
だから右は売国だと言うのですが、これもとりあえず脇に置きます。

総理がしっかり手を打ったにもかかわらず、稲田防相は帰国直後に参拝を断行!
同じ官邸関係者いわく。
_
「安倍さんは、今回の歴史的な真珠湾訪問が大きな功績になると考えていたのに、
稲田さんのせいでケチがつき、大層お冠です。
それで、間接的に稲田さんに伝わるよう、方々に不満を言い触らしていますよ」
_
モグラ叩きじみている感もありますが、中国や韓国、さらにはアメリカの反応を気にしたあげく
閣僚の靖国参拝を必死に阻止しようとする総理が
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
の体現者だというのは本当か?
_
ついでに安倍総理、2015年の戦後70年談話では
昭和前半期に「国際秩序の挑戦者」となったことを反省。
問題の真珠湾訪問でも、
アメリカとの「和解の力」なるものをしきりにアピールしていたのですぞ。
_
d(^_^)\(^O^)/ただの過大評価じゃん\(^O^)/(^_^)b
_
それはまあ、左翼・リベラルとしては
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
が保守の側に見られる、ということにしておかないと、
自分たちの存在理由が脅かされかねず、都合が悪い。
その事情はよく分かります。
_
だとしても、靖国参拝をかくも忌避する人物を
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
の体現者のごとく見なしたがるのは、いかんせんナンセンスではないでしょうか?
_
私の関知するかぎり、日本は良くも悪くも戦前に回帰などしません。
過去70年あまりの歴史の経緯と、それがもたらす影響を消し去って
1945年以前の段階に戻るなど単純に不可能です。
_
同時に、「国際秩序への挑戦者」となった戦前の経緯を反省し、
とにかくアメリカにつきしたがってさえいれば、
日本の将来が安泰ということにもならない。
_
戦後からズルズル抜け出せないままでも、
あるいは下手に戦後から脱却しようとしても、
衰退・没落の道をたどるリスクは厳然として存在するのです。
_
ところが左翼・リベラルはあいもかわらず
「日本を戦前に逆戻りさせようとする動き」
を気にしてばかり。
保守は保守で、安全保障の強化を謳いつつ
国のために命を捧げた人々に感謝の心を表すことを避ける始末。

どっちに転んだところで、日本再生など望むべくもないでしょう。
だから『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!

なお次週、2/8は都合によりお休みします。
2/15にまたお会いしましょう。
ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)『右の売国、左の亡国』の背後には、キッチュによる思考停止という厄介な構造があります。その体系的分析はこちらを。

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/(紙版)
http://qq4q.biz/uaui(電子版)

2)戦後日本が『右の売国、左の亡国』という袋小路にゆきついた経緯についてはこちらを。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
http://amzn.to/1lXtYQM

3)出演したこの番組でも、総理の靖国参拝を求める発言が出ていました。

日本文化チャンネル桜「闘論!倒論!討論!」
「どこへ行くアメリカ?そして日本〜トランプ大統領就任」
https://youtu.be/zoDYQ2IhoQY

4)「経済も学問・文化もすべてパアにしてしまえば、国家はいったいどうなる?(中略)そんな国には何もないし、未来への展望も望みえない」(113ページ)
エドマンド・バークの警告です。日本がそうならないことを祈るのみ。

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)

5)「このままだと、われわれは負の遺産を残してしまうことになる」(134ページ)
トマス・ペインの警告です。ふたたび、そうならないことを祈るのみ。

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)

http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)

6)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

—発行者より—

【オススメ】

★★★★★:眞鍋千之様のレビュー
「今月号に限らず、大学時代に習いたかったことばかり…」

54年前に経済を勉強しに大学に入って、
手応えのある講義はただの一度もなかった。

ケインズの経済学を基にして研究する現実から
離れた理論上の学問でしかなかったのだ・・・。
ただの自己満足の論理的趣味の世界でしかなかったのだ・・・。

月刊三橋で経済は経世済民だと知ったのだ。
そりゃそうだろう、経済学のための経済で
あるはずがないのだ。学生時代に聞きたかったが、
まだ生きている中に知ったのだから幸せ者だ。

世の中、世界の見方が完全に変わった。

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