【藤井聡】日本の「内需拡大」こそ、良好な日米関係のために不可欠である。

FROM 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

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様々な「過激」な発言を繰り返してきたトランプ大統領が就任して以来、良好な日米関係を築くのにどうすればいいのかについて、日本国内では様々な議論が展開されています。

トランプ大統領がTPPからの脱退を宣言した今、これからは日米の二国間FTAを進めるべきだ、という方針や、
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM30H0Q_Q7A130C1MM0000/

トランプが最大100超円規模のインフラ投資を米国内で行おうとしているのだから、それを支援すべく、日本のファンドが「融資」してはどうか――等が提案されています。
http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS01H5E_R00C17A2MM8000/

しかし、二国間FTAを進めたところで、「日本の需要を、アメリカに差し出す」というもので無い限り、トランプ大統領が満足するとは思えません。もちろんそれは、俄に日本の国益に叶うものになるとは、到底思えません。両国が豊かになる貿易協定を探るには、これまで同様、交渉決裂の可能性も見据えつつ、TPPと同様、あるいはそれ以上にじっくりとした議論が不可欠です。

あるいは、日本から米国への「融資」(あるいは直接投資)を大量に行えば、最終的に「円安」となり、アメリカの対日貿易赤字が、現状の「7兆円」程度からさらに拡大することも懸念されます。

なぜなら、アメリカ側は「円」をもらっても、米国内投資などできないからです。日本からの対米融資で、米国内で投資するには、結局はどこかで「円からドルへの両替」が不可欠となります。そして、そういう両替は「円を売ってドルを買う」事ですから、必然的に円安を誘発するのです(もちろん、ドル準備高があるなら、それを回せばよいのですが、それは、対日貿易赤字が大量にあることが前提になっています)。

そうである以上、「アメリカに日本が融資しましょう」という方針は、結局は対日貿易赤字を「拡大」させ(あるいは、その拡大状況を固定させ)、結果的にトランプが望むものとは違ったものとなることが危惧されます。

・・・・

というような事を考えると、今、巷で議論されている、「二国間FTA」も「対米融資」も、結局は、日米双方にとって満足できる「Win Win」の帰結を俄かにもたらすとは、なかなか思えないのです。

そんなことを踏まえた上で、筆者が今、日米関係を良好にする最も効果的だと考えるものは、次のようなシンプルな方針です。

  「財政政策を基軸としたアベノミクスを成功させ、
   日本の内需を拡大し、アメリカの対日貿易赤字を縮小させる」

これなら、アメリカ側には、貿易赤字を縮小でき、米国内雇用を拡大させるというメリットがあると同時に、日本側には、デフレ脱却で経済成長ができるというメリットがあるのです!

そもそも、「アメリカの対日貿易赤字の縮小」という議論は、80年代にもあったのですが、その時にアメリカ側が徹底的に要求してきたものが、これだったのです。

ちなみに、その時の対日要求は「630兆円もの超大型の、日本国内での公共投資の拡大」でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B1%B3%E6%A7%8B%E9%80%A0%E5%8D%94%E8%AD%B0

なぜ、アメリカがこれを要求してきたのかという点については、最近では直感的に理解する方が少なくなっているのかもしれませんが―――それは次のような理由によります。

まず、日本国内の内需が拡大し、日本人がたくさん消費するようになれば、これまでアメリカに売りさばいていたモノを、アメリカ人に売る(輸出する)代わりに、日本人自身が買うようになる。結果、「アメリカへの日本からの輸入」が減ることになる。

同時に、日本人がたくさん消費するようになれば、これまでアメリカから買わなかったものを、もっとアメリカから買うようになる。そうなると、「アメリカから日本への輸出」が増えることになる。

こうして、日本の内需の拡大は、アメリカからの輸出を増やし、アメリカへの輸入を減らし、結果的に、アメリカの「対日貿易赤字」を大幅に縮小させるのです!

例えばクルマで言うなら、日本がデフレさえ脱却できれば、「アメ車の購入」は増えると同時に、「日本車をアメリカに売る代わりに日本人がより多く買うようになる」という次第です。これこそ、トランプが望んでいる帰結そのものです。
http://www.news24.jp/articles/2017/01/24/10352275.html

仮に、日本の内需が拡大し、アメリカの対日輸出がわずか「一割」(0.8兆円)だけ増え、日本からの輸入がわずか「一割」(約1.5兆円)だけ減れば、それだけで、対日貿易赤字は現状から三分の一(2.3兆円)も縮小されるのです!

つまり、日本の内需拡大は、「劇的」な対日貿易赤字の「縮小効果」を持っているのです。

こうした構造があるからこそ、アメリカは日本に630兆円もの公共投資をするようにという「圧力」をかけてきた、という次第です。

これと同じように、今、安倍内閣が進めようとしている「財政政策を軸としたアベノミクス」を粛々と進めてデフレ脱却が果たし、内需が拡大すれば、「対日貿易赤字」は自動的に縮小するのです!

しかも、そもそも日本は、アメリカからの圧力とは無関係に、デフレ脱却を果たそうとしています。ですがそれができれば、自動的に、トランプ政権を利する結果を得ることが可能となるのです。

だとするなら「対米貿易交渉」を図る上で、これほど日本にとって得策な方針はありません。まさに、これぞ、Win Winの手本となるべき交渉方針。

もちろんより効果的に、両国に利する「対日貿易赤字」の縮小を図るのなら、日本がアメリカから欲しいものを買うように交渉するのが得策です。例えば、「アメリカのシェールガスやシェールオイルを購入する」取引が成立できれば、日米双方に利益があることとなるでしょう。防衛問題に関わるトレードにおいて、そういう取引を考えるという方針もあるかもしれません。

・・・・以上、いかがでしょうか?

以上を踏まえるなら、今、わが国は、

 A.「財出拡大による内需拡大を通した、良質な日米関係」と
 B.「財政規律」

のいずれが重要なのかという点が、問われているのです。

ここでもしも、「B.財政規律」を重視し続けるなら、結局は内需は拡大せず、「アメリカの対日貿易赤字」は抜本的に解消することはなくなります。

そもそも、現在の「アメリカの対日貿易赤字」の元凶は「日本のデフレ」なのです。だからこそデフレ脱却こそが、トランプの要求に対する、最もストレートな「答え」となるのです。

今こそ我が国は、日本国民の豊かな暮らしのためのみならず、良好な日米関係を築き上げるためにも、「過剰な財政規律」と決別することが求められているのです。

追伸:良好な日米関係を導く「日本の内需拡大」―――そのために求められている対策については、是非、下記をご一読ください。
https://goo.gl/xkQukg

—発行者より—

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★★★★★:眞鍋千之様のレビュー
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