【藤井聡】日本は今、G7諸国の中で最も「緊縮」的な財政である ~OECDからの警告~

FROM 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

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OECDのレポートで、G7各国にどれだけの「財政余地」があるかが報告されています。
http://www.oecd.org/eco/public-finance/Using-the-fiscal-levers-to-escape-the-low-growth-trap.pdf

その中で、最も「財政余地がある」と判定された国家は、なんと他でもない、わが国「日本」でした。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=977224089045201&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=3&theater

この「財政余地」という指標は、「あとどれくらい財出を拡大すると、財政が悪化するのか――?」という尺度なのですが、比較的余裕のあるイギリス(UK)やカナダ、ドイツでも、GDP比で「1%」程度しか財出余地はない、という中、日本は実にGDP比で「2%以上」(つまり、10兆円以上)もの余地がある、という結果になっているのです。

では、OECDでは、どういう基準で「財政が悪化する」と判断しているかというと、日本が「金科玉条」のごとく取り扱っている、かの「プライマリー・バランス」(PB)に準拠しているのではありません。

政府関係者やエコノミスト含め、誤解している方が日本にはたくさんおられるのですが、PBなるものをここまで重視している国は他に、ありません。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/12/23/fujii-122/

もちろん、どんな国でも「財政規律」は重視されています。

ですが、その時に重視されるのは、諸外国ではPBなどでなく、

  「債務対GDP比」の「変化」

なのです。

少しわかりにくいかもしれませんが、以下にて簡単に説明したいと思います。

まず、「債務対GDP比」とは、これまでの借金の合計(累積債務)が、その国のGDPに対して、何パーセントの割合となっているのか、という水準。一般的に国内でよく言われている定義に基づけば、日本は今、おおよそ1000兆円の累積債務があり、かつ、GDPが500兆円ですから、債務対GDPはおおよそ200%、ということになります。

ですが、財政規律を考える上で重要なのは、この200%という水準そのものでは、

 「ない」

のです。

国際的に重視されている「財政規律」とは、この200%という数字が、

  「増えるのか減るのか」

という一点なのです。

この比率が無限に増えていけば、その内、政府やその借金を返すことが出来なくなってしまいます。なぜなら、GDPが過剰に小さな国の政府には、大量のカネを貸してやろうとは、皆が思わなくなってしまうからです。

ですが、この債務対GDP比が減っていくなら、その国の政府に対して、誰も不信感を持つようなことは無くなり、政府はもっと容易にオカネを借りることができるようになっていきます。そもそも「現状のGDPの水準でも借金を返せている」わけですから、GDPに対して借金が相対的にもっと小さくなっていけば、さらに余裕で政府はカネを返せるに違いない――と皆が予期するからです。

ですから今、「財政健全化」にとって大切となるのは、「借金がどれだけあるのか?」とか、「借金がGDPより何倍大きいのか?」という視点でなく、「債務対GDP比」が「拡大」しているのか、「落ち着いている」のか、あるいは「縮小」しているのか――という視点だということになるのです。

そして今、日本では「債務対GDP比」は安定基調にあり、むしろこれから「改善」していくであろうことが、内閣府の試算でも計量的に示されているのです!

(下記の内閣府資料のP3の下図をご参照ください。いずれのケースでも2017年まで、債務対GDP比は縮小していくことが予想されています。しかも、今、安倍内閣が目指している「経済再生ケース」では、以後ずっと縮小し続ける(!)見通しとなっています。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h28chuuchouki1.pdf )

したがって日本は今、GDPの2%以上(つまり、10兆円以上)財出を一気に増やしたとしても、債務対GDP比が「発散」することはない――それくらいに、「今」の日本の財政はもう既に「健全だ」という次第です。

しかも、このOECDの評価は、

  「財政支出を拡大しても、GDPは拡大しない」

という前提で行われたものだ、という点に留意が必要です。

実際は財出を例えば10兆円程度増やせば、GDPは確実に10兆円から20兆円は拡大し(一般に、そういう効果は乗数効果、と言われます)、その結果、「債務対GDP比」は(その分母が大きくなる事で)さらに「改善」します。

(注:もちろん、財出は金利にも影響を及ぼしますが、金融緩和を徹底的に進めている現在の日本では、その影響は極めて限定的です)。

この点を考えれば、OECDが計算した2%強よりもさらに大きな水準で財政支出を拡大しても「債務対GDP比」は発散することはない――ということになります。

つまり、財出によるGDPの拡大効果(乗数効果)を考慮すれば(大規模な金融緩和を続けている今)、「実際」には、財政余地は2%どころか、3%や4%以上(つまり15兆~20兆円以上)といった、極めて大きな水準で存在しているのです。

いずれにせよ、今回のOECDの指摘は、今の日本の財出レベルが、先進諸外国に比べて「低すぎる」という事を、すなわち今の日本がG7諸国の中でも特に激しい「緊縮」財政を行っているという事を意味しています。

折りしも今、G7の中でも唯一日本だけが、長いデフレ不況に苦しみ続けています。

もしも日本がこれ以上、G7諸国の中でも特に激しい「緊縮」財政をこれ以上続けてしまえば、デフレがさらに継続することは必至。その結果、安部総理の念願である「アベノミクスを通した600兆円経済の実現」は「失敗」してしまうこともまた、「必至」の状況です。

だとするなら、OECDが指摘する、G7諸国中最大の「財政余地」を徹底的に活用して、大規模な財政政策を展開し、デフレ完全脱却を実現していく事が、今、強く求められているのです。

それができれば、内需は拡大し、国民所得が上昇すると同時に、トランプ政権が何よりも注目している「日米貿易不均衡」も是正され、良好な日米関係が形成されていくこととなるでしょう。そしてその結果、日本のGDPはさらに拡大し、税収も拡大し、財政がさらに健全化されると同時に、尖閣防衛や巨大地震対策をはじめとした様々な重要課題に、その公費を充当していくことも可能となるでしょう。

そうである以上、今回のレポートは、今、「日本よ、もうこれ以上、『緊縮』財政を続けてはならない!」という「OECDからの警告」と受け止めることができるのではないかと思います。

わが国の財政が、こうした正しい情報に基づいて、冷静かつ合理的に展開されんことを、心から祈念したいと思います。

追伸: OECDが示した、G7諸国中、最も大きな水準と言われたに本の「財政余地」。これをどう活用すべきか、については、是非、下記をご一読ください。
https://goo.gl/xkQukg

—発行者より—

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