【適菜収】ジャズの話

From 適菜収@哲学者

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今回も与太です。
与太なんだから、いちいち怒らないでくださいね。
それでは与太スタート。

【エアロスミスが支持された理由】

適菜 私は中学生、高校生の頃、HR/HM(ハードロック/ヘビーメタル)を山ほど聴いたんですよ。友達やレンタルショップからCDを借りてきて、カセットテープにダビングして溜め込んでいった。それが500個くらいになったとき、ゴミの山であることに気づいた。
山田 あれは面白い世界だよね。
適菜 今聴き返したいアルバムはほとんどありませんが。メタリカの初期メンバーだったデイヴ・ムステインは、メタリカを辞めた後に、メガデスっていうスラッシュメタルのバンドを作るんです。日本のテレビによく出てくるマーティ・フリードマンが途中から参加するんですけど。
山田 日本語とギターが達者な人ですね。
適菜 当時は、デイヴ・ムステインは乱暴者というイメージで売っていた。HR/HMの世界ってプロレスに近いんですよ。
山田 プロレスファンはメタル聴いていますよね。服装も似ているし。金色の長髪で、皮のブーツ履いたりして。
適菜 ちょっと悪者ぶったりして。メンタリティーが同じなんですよ。
山田 実はいいとこのボンボンなんだけどね。
適菜 「本当はいい人でした」みたいな見せ方も、プロレス的ですよね。プロレスの悪役って、時期が過ぎるとバライティ要員になるじゃないですか。
山田 デストロイヤーもそうだしね。
適菜 ダンプ松本は実はいい人だったとか、アブドーラ・ザ・ブッチャーは実は知的で寡黙な男だったとか。そりゃそうだよね。本当に悪人なわけないじゃない。悪い奴は興行のほうに回るわけで。
山田 うん。
適菜 あれと同じで、HR/HMの世界でも、「オジー・オズボーンは、本当は読書家のインテリだった」とかやるわけ。紙芝居の世界だよ。
山田 まあ、大人は裏を知りつつ、そのお遊びに付き合うんだけどね。
適菜 「お、いつものやつ、やっているな」と。だから、音楽的にはそれほど優れたものは求められていない。
山田 娯楽はわかりやすいほうがいいからね。とりあえずパワーをもらいたいから。
適菜 だから、演奏も「早ければ早いほどいい」ということになる。ミスター・ビッグのビリー・シーンみたいにドリルを持ち出したり。目に見えるような大技が求められる。
山田 それもプロレスと一緒。きちんと動かない筋肉でも、とりあえず見栄えがいいことが大事だからね。
適菜 「HR/HMはその程度のもの」と括るのは乱暴だけど、実際その程度なんだから仕方がない。エアロスミスのジョー・ペリーはどうですか?
山田 あれはいいギタリストですよ。アメリカ社会においては、明日への活力につながる音楽でしょう。エアロスミスは、今でも現役でやっているからすごい。
適菜 市民運動やっている奴より、スティーヴン・タイラーやスマップの中居君のほうが立派だよ。だから、エアロスミスをバカにしないでください。別にとりたてて聴く必要もないけど。
山田 カトちゃんに「歯磨けよ!」と言われたら、素直に歯を磨きたくなる。それと同じで、ああいうベタな芸能は、社会に貢献するんですよ。
適菜 虫歯が減ったり。そう考えると、エアロスミスが長年に渡り全米で支持されてきた理由が分かるような気がします。あれはアメリカ版の「8時だョ!全員集合」なんだよ。

【ジャズとサンプル文化】

適菜 山田さんが最初にバンドを組んだのは?
山田 大学に入ってから、ブルース・スプリングスティーンのコピーバンドに入ったのが初めて。そのときはベースを弾いてましたけどね。『ボーン・トゥ・ラン』というアルバムがあるでしょう。
適菜 『明日なき暴走』。
山田 たまたま所属したバンドに、それを演りたいという奴がいてね。その後、ジャズ研に入ってチャーリー・パーカーをやったんだけど、ハードルが高すぎて挫折したの。
適菜 なるほど。
山田 ジャズはある種の覚悟が必要だよ。ジャズはフィジカルな部分を前面に押し出す音楽だと思う。多くの人がジャズに求めているのは、プレイヤーが目の前で汗をかきながら一発勝負する姿を見ることなんですよ。
適菜 だから、素人には演奏のハードルが高い。
山田 ジャズにはサンプル文化をよしとしない傾向があるでしょう。マイルス・デイヴィスみたいにテープを切ったり貼ったりするのは例外中の例外。あれは反則技扱いです。
適菜 うん。
山田 今の忙しい人たちは楽器の練習に費やす時間はあまりない。だから、ジャズは廃れちゃったのかな? ヒップホップもそうだけど、「いかに気持ちよくなるか」という本質的な方向に音楽は向ったのかもしれない。90年代の音楽も自分に正直な気がするし。
適菜 そうですね。
山田 オレは若い人に音楽をやってもらいたい。新しいバンドを見たいんだよ。みんな、音楽やりましょう。
適菜 音楽聴いていない若者は意外に多いですね。どうしてなんだろう?
山田 ゲームをやったり、乳繰り合ったりして、最終的には結婚ですかね。
適菜 今はユーチューブやニコニコ動画があるので、貴重な映像が無料で見れるようになった。これはすごいことですよ。昔はブートの映像を高いカネだして買っていたわけですから。そういう意味では恵まれている状況です。
山田 日本人は、世界中の音楽を聴くことができる環境にある。だから、もっとありがたがってほしいよ。好きなだけレコードが聴けるんだから、死ぬまでの間、しこたま聴いたほうがいい。
適菜 音楽ファンを自称している奴でも、ポルカやタンゴをきちんと聴いていなかったりする。それじゃあ、もったいないよね。
山田 ああいうものを見て、マネしたくなったら、見る側から演奏する側に転じてもいいんじゃないかな。音楽に限らず、なにかを作るということは大切だよ。へぼくてもいいじゃないですか。陶芸でも小説でも、大きなところを狙わずに、身の丈にあったところから始めればいい。
適菜 それはプロにも言えます。自分探しを始めてしまうミュージシャンは多いでしょう。60年代のフリージャズでも、本当に残るものは一割以下だと思いますよ。
山田 今聴くとひどいものもあるからね。アーチー・シェップなんて眉唾でしょう。
適菜 完全に眉唾です。
山田 意外とヘボイからねえ。
適菜 アーチー・シェップは、いろいろ試行錯誤してダメだったから、結局古巣のブルースに帰ったんです。そのブルースがまたダメなんだけど。
山田 そうなんだよね。歌もののスタンダードをやったり、誤魔化しながら下手なバラードを吹いたり。
適菜 あの時代を象徴するアルバムとして『ザ・マジック・オブ・ジュジュ』があるけど、あれに参加した人たちは、ほとんど残っていないですよね。エド・ブラックウェルくらいですか?
山田 当時は、マリオン・ブラウンみたいなチャーリー・パーカー直系のバッパーが、飯が食えないのでフリージャズのムーブメントに乗ったというようなケースが多い。それでちょいと小金を稼げたかもしれないけれど、音楽的にはそれまで。だったら、ソニー・スティットのほうが徹底していたよね。

【若者とはつるむに限る】

適菜 そういう意味では、断トツなのはマイルス・デイヴィスでしょうね。マイルスはフリージャズはほとんど無視してます。
山田 エリック・ドルフィーでさえマイルスに嫌われていた。
適菜 「今度会ったときは、あの野郎足を踏んづけてやる」という有名な発言が残っていますね。
山田 マイルスは、モードにさえ行く必要もなかった。ハード・バップのスタイルで十分第一線をキープすることができた。それでも脱皮を繰り返していく。ウェイン・ショーターやトニー・ウィリアムスといった若手を引き連れて『ビッチェズ・ブリュー』まで突き進んでいく。
適菜 ハービー・ハンコックが言っていたと思うんですが、あのときのバンドのメンバーは、ウェイン・ショーターやトニー・ウィリアムスも含めて、自分たちが何をやっているのか、わかっていなかったと。つまり、音楽のフロンティアに到達してしまったので、そこから先に鳴っている音はマイルスの頭の中にしかないわけです。だから、マイルスについていくのに精一杯だったと。
山田 だろうねえ。
適菜 マイルスが好きな人って、それぞれの時期の作品に思い入れがあると思う。50年代、60年代、70年代、少数派だけど80年代。でも、80年代マイルスも奇跡的なバンドですよ。
山田 80年代に入って復帰すると、マイルスはプリンスやマイケル・ジャクソンを横目で見ながら、シンディ・ローパーの曲までやってしまう。頭が柔らかい。
適菜 世俗の価値観に従っていたらできない。すでに確固とした名声を築いていたんだから。
山田 自分に正直だから、「タイム・アフター・タイム」が気に入れば演奏してしまう。
適菜 それとスライ・ストーンの影響は大きいでしょう。
山田 マイルスの自伝にも書いてあったね。「スライ&ザ・ファミリー・ストーンのようなバンドを作りたい、ジミ・ヘンドリックスみたいなギタリストを使いたい」って。あの頃はもういい歳ですよね。
適菜 『ビッチェズ・ブリュー』のときが40代半ば、1980年に復帰したときが50代の半ば。
山田 ああいう大人になりたい。
適菜 頂点を極めているのに、また若者を集めてバンドをつくって。
山田 『ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン』で81年に復帰作を出したときも、マーカス・ミラーやマイク・スターンといった20代の若者とやっている。それがすべて形になっている。
適菜 だから若者とつるんだほうがいい。老人はマイルスみたいに若者と遊んだようがいい。
山田 マイルスについて語ろうとしても、すでにマイルス本は山ほど出ているからね。逆にマイルスで語られていない部分ってなんだろう?
適菜 声は?
山田 あの声は白人警官に殴られて潰されたらしい。菊地成孔の本に書いてあったけど。もともとは気さくでおしゃべりな人だったらしい。
適菜 へえ。目つきはどうでしょう。マイルスは目つきが悪い。だから、メガネをかけている奴は、メガネをはずしてステージに立ってほしいね。
山田 顔は重要だからね。
適菜 「男は40歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」なんていうでしょう。でも、責任なんて持たないほうがいいんですよ。
山田 責任を持たないとオレみたいになるよ。ルーファス・トーマスくらいまで突き進めば立派だけど。
適菜 ライオネル・リッチーだって責任とっていないでしょう。
山田 オレたち不謹慎なことしか言っていないね。

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PS
第1回目で、「『場違いだからやめてくれ』というご意見がありましたら、遠慮
なくコメント欄に書いてくださいね。すぐ、やめますから」と書いておいたので
すが、「場違いだからやめてくれ」というコメントがありましたので、やめます。
なんか私のブログにもこういう投稿があったんですよね。
「あなたの好みを語るなら結構だが、ヘッタクソなバンドのサポート程度の与太
が、格上のミュージシャンをボロカスに叩き、読者を怒らせる愚行はいい加減に
やめてください」
http://ameblo.jp/ziita1130/entry-11983403580.html
なんだか傷つけてしまったようで。。。ごめんなさいね。
ということで、今回が最終回です。それでは皆様またどこかで。さようなら。